〜妊娠中の抗てんかん薬〜

新生児の奇形発生率に差


〔米ルイジアナ州ニューオーリンズ〕米,英など数か国の医薬品規制当局が妊娠中に服用した抗てんかん薬(AED)の胎児へのリスクについて調査しているが,米国てんかん学会の年次集会では,複数の発表者によりバルプロ酸ナトリウムが胎児に重大な奇形をもたらすリスクが最大であるとの知見が示された。

10〜14%の発生率

マサチューセッツ総合病院(ボストン)のLewis B. Holmes博士は,7 年間で新生児に二分脊椎や心臓欠陥などの重大な奇形が発現したのは,バルプロ酸ナトリウムを服用していた母親149例のうち16例(10.7%),フェノバルビツールを服用していた77例のうち 5 例(6.5%)であったと発表した。オーストラリア妊娠登録によると,セントビンセント病院(メルボルン)では同薬を服用していた母親での胎児奇形発生率は14.2%(分娩168例中24例)であった。

フロリダ大学(フロリダ州ゲインズビル)のKimford Meador博士によると,米国と英国の26施設で361例の母親を対象として行われた共同研究では,バルプロ酸ナトリウムを服用していた母親72例中 10例(13.9%)で胎児に重大な先天性奇形が発生したという予備段階の結果が得られた。その他の抗てんかん薬による胎児奇形の発生率は,フェニトインで61例中 3 例(4.9%),カルバマゼピンで120例中 3 例(2.5%),lamotrigineで108例中 1 例(0.9%)であった。

生後 1 年間はフォローを

カロリンスカ研究所(スウェーデン・ストックホルム)のTorbjorn Tomson博士は,妊娠登録(EURAP)に登録された女性1,744例が出産した新生児の奇形のうち29%は出生後 1 年以内に初めて発見されたことから,抗てんかん薬を服用している女性から生まれた児は,少なくとも 1 年間フォローアップすることが重要であることを強調した。研究に参加した女性が比較的少なかったため,これらの報告はいずれも予備的なものとなっている。 2 種類以上のAEDの服用や,妊娠中にAEDの種類を変更することなどは交絡因子となる。胎児の安全性に関しては,用量も重要な因子である。てんかん発作は胎児に悪影響を及ぼすためコントロールする必要があることも,さまざまな薬剤のリスクの見極めを困難にする問題となる。

ボストン医療センター(ボストン)てんかんサービスのGeorgia D. Montouris部長によると,てんかん妊婦の約30%が妊娠中に発作を起こす。また,比較的新しいAEDの効果に関する十分な情報がないことも問題となっている。こうしたなか,UCB Pharma社は2005年 1 月からNorth American Keppra(レベチラセタム)妊娠登録を開始し,この新しい抗てんかん薬を妊婦が服用した場合の胎児への影響に関して調査を開始すると発表した。
 
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